📘映画を観る前に知っておきたい“原作『国宝』”の世界
2025年6月に公開される映画『国宝』──
主演の吉沢亮×横浜流星という豪華なキャストと、李相日監督による圧巻の映像世界が早くも話題を集めています。
ですが、この映画にはもうひとつの“主役”があるのをご存知ですか?
それが、原作である**吉田修一の小説『国宝』**です。
この小説を知ることで、映画の登場人物の行動や表情により深い意味が宿ることになるでしょう。
📖吉田修一『国宝』とは?
小説『国宝』は、作家・吉田修一による長編小説。
朝日新聞にて2017年から約1年半連載され、その後2018年に大幅な加筆を加えて単行本化されました。
📚 文芸界での評価も非常に高く、以下の賞を受賞しています。
- 👑 第69回 芸術選奨文部科学大臣賞
- 👑 第14回 中央公論文芸賞
さらに、読売文学賞の候補にも選ばれ、
“近年の吉田作品の中でも屈指の傑作”として名高い一作となっています。
✌️物語は“2部構成”で描かれる
小説は上下巻構成となっており、それぞれに異なる時代とテーマが設定されています。
【上巻】青春篇
舞台は昭和30〜40年代。
少年・喜久雄が歌舞伎の世界に飛び込み、舞台に立つ喜びと苦しみを知っていく成長の物語です。
【下巻】花道篇
時代は平成に入り、中年となった喜久雄の人生を描きます。
過去との決別、弟子や舞台との関係、そして芸に殉じる覚悟――
人生の終盤に訪れる“選択”の物語です。
この二部構成により、読者は一人の芸術家の生涯をリアルに体感できる構成となっています。
👥喜久雄と俊介――異なる出自、交差する運命
主人公・立花喜久雄は、暴力団の父親のもとに生まれ、幼い頃に父を失います。
その後、歌舞伎界の名門に引き取られ、“芸”と向き合う人生を歩むことになります。
そこで出会うのが、大垣俊介。
裕福な家庭に育ち、血筋も伝統もすべてを持つ“正統派”の若者です。
2人はまったく違う世界から来ながらも、
舞台の上では唯一無二の存在として交錯し、互いを意識し、やがて運命のライバルとなっていきます。
吉田修一はこの2人の関係を、友情・尊敬・嫉妬・憎しみといった複雑な感情で編み上げていき、
読者は“人と人の衝突”に息をのむことになります。
🎭“芸”は血ではなく、命でやるもの
本作の最大のテーマは「芸とは何か?」です。
作中では幾度となくこの問いが繰り返されます。
そしてその答えはこうです👇
血筋や家柄の有無ではなく、
どれだけ“自分を削って舞台に立てるか”で芸の価値は決まる。
立ち方一つ、目線一つ、沈黙の“間”の取り方ひとつ。
それらに宿る“命の震え”こそが芸である――
この哲学が、物語を通して痛いほど伝わってきます。
喜久雄が“自分を削って”舞台に立つ姿は、読む者の胸に焼きつき、
「本物の芸術とはなにか?」を静かに問いかけてくるのです。
📝映画では描ききれない“内面”の魅力
映画『国宝』では、美しい映像と豪華キャストによる演技が大きな魅力です。
しかし原作小説には、**文字でしか描けない“心の深層”**があります。
たとえば:
- 喜久雄が舞台裏で震えるシーン
- 俊介が父に向ける“言葉にならない怒り”
- 舞台上で交錯する2人の無言の対話
こういった細やかな心理描写は、やはり活字でこそ味わえるものです。
映画で“全体像”を感じ、小説で“内面”を知る。
この2つの体験を重ねることで、作品への理解と感動が一層深まります。
📚執筆のきっかけは“積恋雪関扉”
原作『国宝』の着想となったのが、歌舞伎演目「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」。
吉田修一はこの演目を観劇し、
「舞台に生きる者の孤独と誇り」を書きたいという思いに駆られたと語っています。
また、映画監督・溝口健二の『残菊物語』にも影響を受けたとのこと。
いずれも「舞台に命を捧げた者たち」を描いた作品です。
つまり『国宝』は、過去の芸術作品たちへのオマージュでもあるのです。
🗣️読者からの感想|「人生で一番泣いた」「圧倒的だった」
本作には熱狂的なファンが多く、SNSやレビューサイトには絶賛の声が並んでいます。
📖 読者の声(一部抜粋)👇
💬「何度も舞台に立つ喜久雄の姿に、自分の人生を重ねてしまった」
💬「涙が止まらなかった。これは“芸人”ではなく“人間”の物語」
💬「俊介が抱えるプライドと嫉妬の描写がリアルすぎる」
💬「上下巻読了後、1週間何も手につかなかった。それくらい魂を持っていかれる作品」
こうした“読後の深い余韻”も、本作の魅力の一つです。
🎬映画と小説、どちらから入ってもOK!
『国宝』の魅力は、映画と小説の両方に詰まっています👇
パターン | メリット |
---|---|
小説 → 映画 | 背景や心情を理解した上で映像を観ることで、より深く共感できる |
映画 → 小説 | 映像で圧倒された後に、文字で真実を掘り下げることで世界が広がる |
どちらを先に楽しんでも損はありません。
ただし、両方体験することで『国宝』の持つ“芸と命”の物語を最大限に味わうことができます。
📝まとめ|“命を削る芸”を、文字で体感せよ
映画『国宝』は、魂をぶつけ合う演技と、圧倒的な映像美で観客を魅了することでしょう。
しかし原作小説『国宝』には、それとはまた違う、**“静かな凄み”**が宿っています。
何かを捨ててまで守りたいもの。
誰にも見られない場所で、積み重ねられてきた鍛錬と孤独。
それらが、文字を通じて読者の心に深く沈んでいきます。
「芸に生きる」とはどういうことか?
「自分の人生をどう捧げるか?」
そんな問いを受け止める準備がある人にこそ、この本を手に取ってほしい。
映画と小説。
その両方を味わうことで、きっと“本物の芸術”に触れられるはずです。